筋肉業界もここ10年で大きく変貌を遂げました。
トレーニングジムでは、パーソナルトレーニングジムが台頭したことで筋トレブームが起きました。
そしてプロテインもダイエットなど一般需要が加速するなか、粉状のものだけでなくタブレット状の筋肉サプリメントを製造するメーカーが躍進しています。

HMBってよくネットサーフィンしてると広告とかで出てくるけど、実際はまだ使用したことはないんだよね。なんか良く分からないし。

筋肉サプリメントとの中では、今やダントツで人気なのがこのHMBなんだ!今回は初心者でも使用して問題ないのか?などその期待される効果やプロテインとの違いについて解説するよ!
プロテインの中でもよく耳にする種類が「ホエイプロテイン」というもの。トレーニングジムに通い、マッスルマッスルな人にとってみれば、毎日欠かせないものですが、これから筋トレを始める初心者やダイエッターにとってみれば、実際に必要なものか理解し[…]
HMBとは?
「β-Hydroxy β-MethylButyrate」のそれぞれの頭文字を取ってHMBと呼ばれ、日本名では「3-ヒドロキシイソ吉草酸」と呼ばれる成分になります。
アイオワ州立大学のニッセンをはじめとするグループは長年HMBの研究を行い臨床試験を繰り返し行ってきたのですが、今から約25年前の1996年にトレーニング中の筋肉代謝に及ぼす影響の臨床試験結果を発表したことでHMBは注目されました。
HMBはロイシンの代謝中間物
私たちの筋肉や皮膚・髪の毛などのタンパク質でできており、20種類のアミノ酸で構成されています。
その中でも体内で生成できない9種類の必須アミノ酸は、食物で補給しなければいけないのでとても重要なアミノ酸になります。そして、その中でもBCAAは、筋肉のエネルギー源として必要不可欠なものになります。
筋タンパク質中の35%を占めるBCAA
筋肉のエネルギー源であるBCAAはバリン・ロイシン・イソロイシンの3つからなる分枝鎖アミノ酸(Branched-Chain Amino Acids)で、筋タンパク質に含まれる必須アミノ酸の35%ほどを占めています
BCAAの主な筋肉の作用としてバリンは運動能力の向上、イソロイシンは筋肉のエネルギー、ロイシンは筋肉強化となるのですが、このロイシンの代謝中間物がHMBになるのです。
日本の発売は2009年から
様々な研究と臨床試験が行われ、日本にはサプリメントとして登場しました。
厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書にHMBについて掲載され(リンクはページ下部)たことで一般メーカーも商品開発に積極的になり、その後価格の低下や筋トレブームなどにより、若年層や女性からも支持を集めるようになりました。

つまり、タンパク質→アミノ酸→必須アミノ酸→ロイシン→HMBって感じかな?

そうだね!食べ物でタンパク質を摂取したらHMBへ変換している可能性はあるんだけど、実は食べ物からは、ほんのわずかしかHMBは変換できていないんだ。HMBの効果について説明した後に詳しく紹介するね!
HMBの効果・機能とは?
筋肉強化として活躍するロイシンの代謝中間物であるHMBにはどんな機能を発揮し効果を得られるのでしょうか?
主に3つの働きが大きく関係しているようです。
①筋タンパク質の合成促進
筋肉をつくるためには、”筋肉をつくれ!”という合図(シグナル伝達)を出さないといけないのですが、HMBがこの伝達経路のスイッチをONさせることに活躍し、筋タンパク質の合成が促進されるのです。
つまり、筋肉を同化させるアナボリック効果に期待できるのです。
②筋タンパク質の分解抑制
筋肉をつくれという伝達があれば、”筋肉を分解しろ!”という伝達経路もあるのですが、HMBはこの伝達経路をOFFさせることに活躍するため、筋タンパク質の分解が抑制されるのです。
つまり、筋肉を異化させるカタボリック効果を抑制することに期待できるのです。
③筋細胞の安定
HMBは筋肉のコレステロールの合成を促進させることで、筋細胞の細胞膜がすばやく再生させることで筋肉の安定に力を発揮させます。
つまり、筋肉痛の抑制させることにも繋がるんです。
アナボリックとカタボリック
人が新陳代謝を行うように、その中の筋肉も新陳代謝を行っています。
筋肉を分解することを異化(カタボリック)といい、筋肉を合成させることを同化(アナボリック)と言いますが、この異化(カタボリック)と同化(アナボリック)のバランスが取れていれば筋肉の大きさを維持できるということになり、どちらかが優位に働けば筋肉の減少or肥大となります。
HMBによって筋肉の合成が促進され分解が抑制されるということは、「異化 < 同化」へとなりやすいということが言えるので、除脂肪体重が増加につながっていくのです。

なるほど~。ということは、HMBをしっかりと補給することがトレーニング効果を高めてくれるってことなんだね!

最近では、高齢者の筋力アップや組織修復の観点からガンや火傷の治療などに活躍できないか研究が進められているんだ!
筋トレサプリメントの代表格といえば「BCAA」ではないでしょうか。筋肉の栄養素として欠かせないものですが、そもそもBCAAって何なのでしょうか?トレーニングの合間に取り入れている人が多いって聞くね。[…]
HMBの必要量とは?
一般的な成人の1日に必要なタンパク質の量は体重1kgに対して1gほど、最大摂取量がその2倍となります。
アスリートや激しい筋トレを行う方は1.5倍以上と最大摂取量に近いタンパク質を摂取するのですが、効率よくタンパク質を補充するために食べ物からではなくプロテインを飲用し補給します。
では、このタンパク質からどのくらいHMBは補給できるのか?
また、1日に必要なHMBの量はどのくらいなのか?まとめました。
ロイシンの5%~10%しか産生されない
BCAAのひとつ、ロイシンから作れるHMBはほんのごくわずかであり、ロイシンの5%~10%ほど。
通常であれば食べ物から、タンパク質→アミノ酸→BCAA→ロイシン→HMB、として摂取することになるのですが、一日あたり体内で産生しているHMBの量は0.2g~0.4gほどと言われています。
プロテイン1杯には?
例えば、運動後に素早く筋肉へ吸収するホエイプロテインにはソイプロテインやカゼインプロテインよりもロイシンが多く含まれていて、ホエイタンパク質100gあたり12.2gのロイシンが含まれています。
プロテイン1杯でだいたい20g前後のタンパク質を補給できるので、1/5の2.5gのロイシンがホエイプロテイン1杯に含まれていることになりますので、HMBの摂取量は0.125g~0.25gほどになることがわかります。
HMBは1日3g必要
プロテイン1杯で0.25gのHMBを補給できることがわかりましたが、筋トレやシェイプアップなどトレーニングを行っている人が必要な1日のHMBの量はおよそ1g~3gになります。
トレーニングの激しい方は3gに近く摂取することが望まれますが、3g以上摂取してもあまり効果は変わりません。また、1度に3gよりは、複数回に分けて摂取するほうがより望ましいようです。
プロテイン10杯じゃ足りない
1日3gのHMBを摂取しようと思ったら、ホエイプロテインを10杯飲んでも足りない計算になります。
タンパク質をより摂取しやすいホエイプロテインでさえもこれです。
ちなみに、牛肉100gに含まれるロイシンは約2gほどですので、1.5kg以上、お米だと6kg以上食べないとHMB3gを摂取することができません。

ということは、HMBを通常の食事で基準値まで摂取するのは、フードファイターになるしかないってことだね(*´Д`)

そうなんだ!プロテインでも10杯以上って考えると、普通の方法でHMBを基準値摂取することはできないってことなんだ!だからタブレットタイプのHMBが人気なんだ!
HMBタブレットの特徴とは?
普通の食生活では筋肉に影響を与えるほどのHMBを摂取できないのが現実。だから、HMBを手軽に摂取できるタブレットが人気になっているです。
ここでは、HMBタブレットの特徴やおすすめの飲み方を見ていきましょう。
カルシウム塩が基本
HMBの形状はカルシウムと結合させたタブレットや粉末状で販売されていることが多いです。
これはカルシウムとの結合のしやすさ、高齢者のサルコペニア(筋肉減弱減少)での利用、吸収効率の良さとしてのメリットからHMBカルシウムとして販売されています。
近年では吸収が早いHMB-FAというカルシウム塩ではないタイプのタブレットも発売されています。
1粒300mgほど配合
各製品メーカーによって配合量は異なりますが、1粒あたり200mg~300mgほどのHMBカルシウム塩が配合されています。
そのため、1日3gを摂取するためには、10粒以上摂取しなければいけません。
海外製のHMBは配合量は多いですが、その分1粒のサイズも大きいため、日本人には飲みにくかったりします。
1日の複数回摂取することを意識しましょう。
HMBに副作用はある?
まず、HMBの効果を感じるには3週間ほど継続して摂取することが望まれます。血中HMB濃度を安定的に高めておくことで、その効果は発揮されやすいんだと考えられ、トレーニング効果と相まってと考えると、このくらいの期間になるのでは?と想定されます。
これまでの臨床試験や研究によると、重大な副作用が見つかったという報告はなく、1年以上継続服用しても安全だとされています。
ネットでよくみる副作用ですと、「下痢になる」などと言われますが、個人的筆者に経験談でいえば、「軽い便秘になる」というかなりました(直ぐに慣れますが)。
下痢になった人は、HMBタブレットに含まれる他の成分が原因だったのかもしれません。ちなみに筆者の便秘はおそらく「カルシウム塩」が考えられ、カルシウムでは便秘になりやすいそうです。
副作用ではないですが、基本研究や臨床試験は健康の一般人かアスリート等に行っていることが多いので、妊婦さんや授乳中、持病のある方の使用は控えたほうが無難でしょう。
上級者よりも初心者向け?
筋肉増強剤ではないので筋肉がある程度発達しきっている上級者には見た目での効果は低いかもしれません。また、上級者はリカバリーの仕方も知っているのは、思った以上の回復を感じないかもしれません。
それよりは、筋トレ初心者は、筋肉が発達する伸びしろが大きいのと、トレーニング後のリカバリー知識が乏しいこともあり、摂取することのメリットは大きいでしょう。
飲んだだけでは効果はない
宣伝効果が激しい製品でもあるので、「飲んだだけでマッチョ!」「飲んだだけで痩せる!」などと記載してあることもありますが、
HMBを飲んだだけでは、何も変化は起きません。
筋肉量の減少を抑制することは可能かもしれませんが、摂取するカロリーと消費するカロリーに変化がなければ、筋肉増強剤でもダイエット医薬品でもないので何も変わることはないでしょう。

医薬品ではないし副作用はないから安心して摂取できるんだね!

だからといって、飲んだだけでは何も変わらないのできちんとトレーニングをするんだぞ!
HMBの飲み方はプロテインと一緒でもOK?
HMBの飲み方で注意することはあるのでしょうか?
プロテインと一緒でもいいの?相性のいいものもあるの?調べてみました。
飲み方は1日3回以上に分ける
1日の摂取量は3gですが、1度に3gを摂取するのではなく、食後やスポーツ前後、就寝前後など、1日の摂取量を1回1gほどにして複数回摂取するほうが、効率よく吸収することができます。
HMBカルシウム塩としての血漿半減期は約2.5時間ほどですので、最低でも3時間ほど空けて摂取することが効率が良いと考えられます。
プロテインとの併用がおすすめ
プロテインと併用することで更なる力を発揮しやすくなるでしょう。
その理由として、プロテインは筋肉の材料として、HMBは筋肉への指令として命令を出すことを行うので、そもそも役割が違うのです。
折角HMBを摂取して筋肉へ指令を出す準備ができても、当の材料がなければ、何もできません。
逆にプロテインだけだど、プロテインのほんの一握りだけがHMBとして役割を与えられるので大きく指令を出すことができなく筋肉という材料を持て余してしまうことも考えられます。
クレアチンとの併用がおすすめ
クレアチンは筋肉系サプリメントの中では長年使用されているものになり、瞬発系のパワー&スピードを発揮するためのエネルギー源になるものです。
あと1歩追い込みたいときや記録を狙うときなど限界突破に活躍するクレアチンは、筋肉のリカバリーを支えるHMBとは相性がとても良いです
クレアチンもHMBもどちらも継続して摂取することを心がけましょう。

先ずはその効果を試してみることが一番かな?

トレーニングに合わせて継続的に補給してみよう!
初心者の方が持つプロテインのイメージってどんなんだろう?筋肉がついてしまう?トレーニングしないと太る?とにかく不味い!マツコデラックスの「マツコの知らない世界」でもプロテインをテーマに取り上げていたね[…]
HMBまとめ
- 必須アミノ酸ロイシンの代謝中間物
- 25年ほど前に筋肉への効果が発表された
- 筋肉の合成促進と分解抑制を担う
- 1日に必要な摂取量は3gだが普通の食生活では足りない
- プロテインと併用がおすすめ
参考文献
NCBI国立バイオテクノロジー情報センター①
NCBI国立バイオテクノロジー情報センター②
厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会